一本の電話
「昭和57年、父が家を出て母は残された子供二人抱えて苦しい生活。
疲れ果てた母はフラフラと電車苦手飛び込もうとした。
最後の別れと思って、私と弟の声を聞こうと家に電話したところ、『おなかすいたよう。早く帰ってきて…』という私の声を聞いて、母はその場に泣き伏した。
ただならぬ様子に心配したホームの売店のおばさんに、『どんな事情があるか知らないけど、早まってはいけないよ』と諭され、心を翻し我にかえった。
それから母は元気に働き、私は奨学金とアルバイトで働きながら学校を卒業した。
社会人となり、老いた母を中心に、妻子とともにある幸せ。それは一本の電話からだった」。
人の言葉は緊張の糸を切らし、救う